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約5万本のツツジが彩る九州屈指の古寺

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だいこうぜんじ

大興善寺

佐賀県三養基郡基山町

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大興善寺は行基菩薩が自ら刻んだと伝わる十一面観音を祀る寺です。古代日本の玄関口である太宰府とも近く、唐から帰る途中であった慈覚大師円仁によって復興されたと言われています。「つつじ寺」としても知られ、大正時代から整備された庭園が参拝者の目を楽しませています。

巡りポイント

いまより1300年以上昔に創建されたという大興善寺には、様々な時代に造立された数多くの仏像がおまつりされています。そのなかには、国の重要文化財に指定されているお像や太宰府天満宮から移ってきたというお像も。境内を彩るツツジやモミジとともに手を合わせてみませんか。

本堂とご本尊・十一面観音立像(佐賀県指定重要文化財)

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茅葺き屋根が美しい本堂と行基菩薩が彫ったと伝わるご本尊

今より1300年以上昔、奈良時代を代表する行基菩薩は、現在大興善寺が伽藍を構える地を訪れ、一刀三礼にて十一面観音立像を造立したという。そのお像が現在の大興善寺の本堂におまつりされているご本尊であると伝わる。秘仏のため、通常は厨子の扉が閉じられておりお姿を直接拝することができないが、12年に一度、午年に扉が開かれご本尊の姿を直接拝むことができる。ご本尊がおまつりされる本堂は、元和10年(1624)に当地の藩主であった宗義成公が大檀那となり建立された建物である。明治時代に境内にあった護摩堂を後ろに移築したため、奥行きのある空間が広がっている。

感想■江戸時代に建立されたという茅葺きの本堂は、どこか懐かしさを感じ、本堂の中に入ると落ち着いてお参りすることができました。ご本尊がおまつりされている厨子は細部まで鮮やかに彩られ、細やかに作られていました。この繊細かつ細やかなお厨子の造形から、奈良時代から続くご本尊に対する信仰の篤さを感じました。

木造十一面観音坐像・不動明王立像・毘沙門天立像

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太宰府天満宮より移ってきた神仏習合を示すみほとけ

明治時代に神仏分離が政府により示される以前、菅原道真公をまつる太宰府天満宮は安楽寺天満宮と呼ばれ、境内には神と仏が共存する信仰空間が広がっていた。大興善寺の本堂におまつりされる十一面観音坐像・不動明王立像・毘沙門天立像は、かつて太宰府天満宮の心字池にある中島に建てられていた「本地堂」の本尊であったと伝わる。十一面観音坐像は江戸時代、不動明王立像は平安時代、毘沙門天立像は室町時代の造立とされる。また、十一面観音坐像の頭部は体部よりも古い時代とされ、古像の法力をそのまま残したいという意図があったと考えられている。また、本堂には太宰府天満宮より移ってきたとされる鰐口も掛けられており、地域と太宰府天満宮の密接な関わりが感じられる。

感想■多くの参拝者・観光客で賑わう太宰府天満宮に神仏習合の空間が広がっていたことに驚きました。大興善寺でおまつりされているお像のように、近隣の地域には太宰府天満宮から移動してきたお像や仏具が多く伝えられているとお聞きし、時代が大きく変わるなかでも、次世代へ守り伝えようとした人々の存在があったことを痛感しました。

木造広目天立像・多聞天立像(国指定重要文化財)

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1000年以上ご本尊をお守りする勇ましく凜々しいお姿

国の重要文化財に指定されている広目天立像と多聞天立像は、ご本尊・十一面観音立像を守護するために造立されたという。造立の時代は、両像ともに平安時代後期頃と考えられている。広目天立像は像高約149cmで栴檀(せんだん)を、多聞天立像は像高約145cmで檜を用いて造立されている。かつては、本堂のご本尊の両脇を固めていたが、現在は国宝殿に移り、毎年ツツジ、モミジのシーズンと正月三が日に公開されている。

感想■広目天立像のすらっとしていて凜々しい立ち姿、多聞天立像のどっしりとしていて勇ましい立ち姿に心がつかまれました。正面、左、右と見る角度によっても表情やお像の雰囲気が変化し、今にも動き出しそうな迫力を両像から感じました。ご住職によると、広目天立像と多聞天立像はもともと別々の四天王立像を構成していたと考えられているそうで、それゆえに立ち姿や表情などに異なる印象を受けるとのことでした。大興善寺を中心とした広大な宗教空間の遺風を感じました。

契園と八万四千塔最初の塔(基山町指定重要有形民俗文化財)

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5万本のツツジが咲き誇る絶景と高僧が願いを込めた石塔

本堂の裏手には契園(ちぎりえん)と呼ばれる山林植物園が整備されている。神話の時代、「五十猛命」と、地元の娘「さこの姫」との婚儀が、大興善寺が伽藍を構える契山で行われたという伝承をもとに名付けられた契園は「恋人の聖地」としても知られている。約5万本にものぼるツツジやモミジなど花々が彩り、九州屈指の名所として多くの参拝者が訪れる。この契園は1923年、「八万四千最初の塔」の近くから整備されはじめた。「八万四千最初の塔」は、1802年、高僧として著名であった豪潮律師により建立された。豪潮律師は飢饉や争いが絶えない中、その鎮魂と諸国安寧を願い、全国に八万四千の宝篋印塔を建てようとしたという。その一番最初が大興善寺に建立されている「八万四千最初の塔」である。

感想■約5万本にものぼるツツジが花開いたときの写真は、まさに極楽浄土、この世の風景とは思えないほど美しい光景でした。色とりどりの花々に彩られる巨大な「八万四千の最初の塔」は、まるで花々を愛でる人々を見守っているようにも思えます。人々の平和を願い塔を建立した豪潮律師の願いに触れた心地がしました。

木造准胝(じゅんてい)観音坐像と龍王像

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金色に輝く美しい「仏母」のお姿

本堂内陣には、かつて護摩堂の本尊であったという准胝観音坐像がおまつりされている。中央に金色に光り輝く准胝観音坐像、准胝観音坐像が座る蓮華を難陀龍王(なんだりゅうおう)と跋難陀龍王(ばつなんだりゅうおう)が支える。1800年代頃、京の大仏師であった吉田源之丞の造立である。この准胝観音は、高僧として名高い天台宗の僧侶・豪潮律師により大興善寺にもたらされたと伝わる。

感想■厨子の扉が開き、金色に光り輝く准胝観音のお姿が現れたとき、そのあまりの美しさに息をのみました。数百年前に造立されたと思えない諸尊の彩色に時間が経つことを忘れ、しばらくの間見とれていました。ご住職から准胝観音は「仏母」とも呼ばれるとお聞きしました。その言葉通り、私たちをあたたかく見つめる准胝観音像の眼差しが印象深く心に残っています。

薬師堂

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親しみを感じるお像に囲まれる

平成14年(2002)に建立された薬師堂には、本尊である薬師如来坐像をはじめ日光菩薩・月光菩薩・十二神将立像・十二天立像がおまつりされている。薬師如来坐像は平成14年4月に造立されたお像で、大仏師・西村公朝師の指導により佐川中定師が造立されたお像である。その脇を固める日光菩薩・月光菩薩・十二神将立像の修復も佐川中定師により行われた。十二天立像は太宰府天満宮より明治の廃仏毀釈により移ってきたお像である。

感想■江戸時代初期頃に造立されたという十二神将立像のユーモラスな表情、立ち姿に魅せられました。小さいお像ですが、お薬師さんを必死に守る姿はとても愛くるかったです。十二神将立像とは対照的に、リアルな表情と体格が表現された十二天立像は凜々しく、かっこいい印象をうけました。

report

学生レポート

立命館大学生命科学研究科2年

様々な時代や造立場所、造立した人、言われをもつお像が大興善寺に集い、大興善寺の重層的な歴史や文化に圧倒されます。それぞれのお像が持つ伝承をお聞きしていると、大きく時代が移り変わろうとも未来へ守り伝えようとした先人達の姿が感じられました。九州屈指の花々の名所として知られる大興善寺ですが、境内の美しい風景だけでなく、1300年間に育まれた様々な視点で捉えることのできる魅力が多くあるからこそ、世界中からたくさんの人々が集っているのだと思いました。

history

ご由緒

奈良時代の養老元年(717)に聖武天皇の勅願で行基が創建したと伝わる。その後、平安時代初期の承和年間に焼失するも、唐から帰る途中の慈覚大師円仁によって復興された。その際、慈覚大師が中国で修行した名刹「大興善寺」をもとに「大興善寺」と名付けられたという。戦国時代の戦乱で焼失するも、江戸時代には当地の領主であった対馬藩主宗義成公が大檀那となり本堂を建立し、現在の境内が整備された。その後、高僧として知られた豪潮律師が逗留したことでも知られ、境内各所にその痕跡が残る。平安時代後期に造立された広目天立像・多聞天立像は国指定重要文化財である。

info

参拝情報

名称
小松山大興善寺
(こまつさんだいこうぜんじ)
所在地
佐賀県三養基郡基山町園部3628
googleMAP
参拝時間
8時30分~日没まで
拝観料
契園(つつじと紅葉の公園)
シーズン期間中 大人一般600円、小中学生300円
シーズン期間外 大人一般300円、小中学生100円
団体料金:割引有
宗派
天台宗
御本尊
十一面観音
宝物殿
アクセス
お車■県道17号線 園部インターチェンジより5分、九州自動車道 筑紫野ICより15分 鳥栖ICより15分
公共交通機関■JR鹿児島本線 基山駅よりタクシー7分
バス■ツツジ・紅葉の最盛期のみ、JR基山駅から臨時バス有
駐車場
場所 大駐車場(基山町園部1602-1) 大型 (台数・料金) シーズン(4月中旬から5月初旬、11月中旬~12月初旬) マイクロ500円/台、大型1000円/台 シーズン外 マイクロ、大型ともに100円/台 ※12月31日から1月7日は無料 普通車(台数・料金) 700台収容可能 シーズン(4月中旬から5月初旬、11月中旬~12月初旬)・・・300円/台 シーズン外・・・100円/台 ※12月31日から1月7日は無料
Webサイト
https://daikouzenji.com/

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